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NMNでエイジングを乗り越える?最新レビュー論文から深掘りする魅力と可能性

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こんにちは。皮膚科専門医・医学博士のひふみんです。
ここ数年、美容やアンチエイジングの分野で大きな注目を集めている成分のひとつが「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」。
「年齢とともに衰えてくる肌や体力をなんとかしたい」「より健康的に年齢を重ねたい」――そんな期待を背負うNMNですが、巷の情報が多彩すぎて何を参考にすればよいか迷ってしまう方も多いかもしれません。


今回は、Song, Qin et al. “The Safety and Antiaging Effects of Nicotinamide Mononucleotide in Human Clinical Trials: an Update.” Advances in nutrition (Bethesda, Md.) vol. 14,6 (2023): 1416-1435. doi:10.1016/j.advnut.2023.08.008に掲載された最新のレビュー論文の要旨をもとに、NMNの安全性アンチエイジング効果、そして今後の課題について詳しく解説します。
皆さんの美容・健康知識アップの一助になれば幸いです。

【この論文はどんな内容?】研究の背景と目的

今回ご紹介するのは、ヒトを対象にした臨床試験の結果を中心に、NMNがどのようにアンチエイジングに寄与するかを整理した総説論文です。
NMNは「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」という体内に欠かせない補酵素の前駆体とされ、加齢とともに低下するNAD+を補うことでアンチエイジングが期待されています。
このレビュー論文では、細胞実験や動物実験で得られた多くの結果に加え、実際にヒトに対してNMNを投与した臨床試験の安全性や効果をまとめ、今後の研究課題サプリメント利用の展望について議論しています。

◇ レビュー論文(総説論文)とは?

レビュー論文(総説論文)は、あるテーマに関する多岐にわたる研究結果を俯瞰し、一つの見解にまとめるものです。今回の論文は、NMNに焦点を当てた複数のヒト臨床試験データを取りまとめて、「安全かつアンチエイジングに役立つ可能性があるか」を検証しています。
研究そのものの実験結果を報告するオリジナル論文ではなく、すでに存在するデータを徹底的に整理している点が特徴です。

【NMNとは?】NAD+と加齢の深い関係

NMNを理解するためには、まずは「NAD+」という補酵素について知る必要があります。
NAD+は、細胞内でエネルギーを作り出す反応や遺伝子修復、抗酸化機能など、多岐にわたる重要な生命活動にかかわっています。ところが、年齢を重ねると体内のNAD+濃度が徐々に減少するとされており、これが加齢による代謝の低下や老化現象の一端を担っている可能性が指摘されています。

◇ NMNはNAD+の「前駆体」

NMNはこのNAD+を体内で合成する際の中間生成物(前駆体)です。サプリメントなどの形でNMNを補給すれば、NAD+レベルを高め、加齢によって弱まった細胞機能を補うことができるのではないか、というのが研究者たちの発想です。

◇ 食事からはほとんど摂れない?

実は、NMNはトマト・アボカド・エビなどにも微量ながら含まれているという報告があります。ただ、その含有量は非常に少なく、普通の食事だけでは十分に補うことが難しいと考えられています。このため、サプリメントとしてNMNを直接補うことに注目が集まっているのです。

【主要テーマ1】ヒト臨床試験でのNMNの安全性評価

NMNは比較的新しいサプリメント素材のため、「安全に摂取できるのか?」という点がまず気になるところですよね。
論文でまとめられた複数の臨床試験では、以下のような結果が報告されています。

◇ さまざまな用量で試されるNMN

ヒト臨床試験では、1回100〜250mg程度の比較的低用量から、1000〜2000mgという高用量まで幅広い範囲で投与が試みられています。
・単回投与(1回だけ飲む)
・数週間〜数か月(12週間程度)の長期投与
このように期間もさまざまです。

◇ 副作用・有害事象について

これまでの臨床試験では、大きな副作用や深刻な有害事象は報告されていません。
例えば、日本の慶應義塾大学の研究グループが実施した試験(UMIN000021309)では、1回あたり100〜500mgのNMNを健康な成人男性に経口投与した際、有害な影響が見られなかったと報告されています。
また、1000mg以上の高用量を与えた他の試験(Harvard Medical Schoolによる)でも、安全性に大きな懸念は示されていません。
ただし、「長期的に毎日続けた場合の安全性」については、まだ十分なデータが少なく、慎重に見極める必要があります。

◇ 個人差や基礎疾患の有無

論文のレビューによると、NMNの安全性は今のところ比較的高いと考えられますが、参加者数が少ない中高齢者が中心など、限られた集団でのデータであることに留意が必要です。
基礎疾患を持つ方、若年層、妊娠中など、さまざまな条件下でのデータは依然として不十分です。

【主要テーマ2】アンチエイジング効果の可能性

次に、NMNがどのように「アンチエイジング」に寄与し得るのかについて、論文のレビュー内容を詳しく見ていきましょう。
“アンチエイジング”という言葉にはさまざまな意味がありますが、ここでは「年齢に伴う機能低下を遅らせ、健康寿命を延ばす可能性」という観点で解説します。

◇ 血中NAD+濃度の上昇

NMNを摂取することで、血中や細胞内のNAD+濃度が上昇したという結果が多数報告されています。
たとえば、1日250mgを4〜12週間程度摂取した試験では、NAD+濃度が1.7〜2.5倍程度に上昇したというデータも。NAD+が増えることで、細胞のエネルギー産生や遺伝子修復機能が活性化する可能性があります。

◇ インスリン感受性や体力パフォーマンスの向上

  • インスリン感受性の改善:肥満や糖代謝異常を有する被験者において、筋肉のインスリン感受性が上昇したという結果も。血糖コントロールの改善に役立つかもしれません。
  • 運動耐性の向上:持久系の運動パフォーマンス(VO2maxやVT1、VT2といった指標)を改善したとの報告があり、エネルギー代謝の効率化に関与する可能性が示唆されています。
  • 筋力アップや疲労感の軽減:筋肉量そのものが増えたという強い証拠はまだ限定的ですが、「5回椅子立ち上がりテスト」や「握力テスト」などが改善した例もあります。

◇ 抗酸化や抗炎症作用の可能性

NAD+は、体内の抗酸化システムや炎症制御にも関与するといわれています。
NMNによってNAD+が補われることで、活性酸素種(フリーラジカル)の処理や炎症反応の抑制に寄与し、肌細胞を含む多くの細胞の老化を遅らせる可能性が示唆されています。
マウスなどの動物実験では、紫外線ダメージの軽減シワ形成の抑制老化細胞(セネッセントセル)の減少などが報告されていますが、これが人間にも同様に起こるかは今後の臨床研究次第です。

◇ テロメアの長さとの関連

テロメアは染色体の末端部分で、細胞分裂のたびに短くなるため“細胞老化の指標”とされます。
NMNを摂取したことで、白血球(PBMC)のテロメアが実際に伸びた可能性を示す研究結果もあり、まさにアンチエイジングの象徴的な指標として注目されています。
ただし、こちらも被験者数が非常に少なく、より大規模な検証が必要です。

【主要テーマ3】NMN摂取と美容・皮膚科学的な示唆

私は皮膚科専門医として、肌とのかかわりにも注目しています。
NMNはまだ直接「美容皮膚科学の臨床試験データ」が豊富にあるわけではありませんが、この論文を通して読める限りの情報を共有します。

◇ 肌細胞への影響

皮膚細胞(特に真皮線維芽細胞や表皮ケラチノサイトなど)の活性や修復にかかわる酵素も、NAD+の不足で機能が低下する可能性があります。
加齢によりNAD+濃度が落ちると、肌のバリア機能低下・弾力低下・シワやたるみが促進されるとの考え方もあります。NMNによってNAD+を補うことで、これらのトラブルを軽減することが期待されます。

◇ 活性酸素によるダメージ・光老化への対処

肌老化の大きな原因に、紫外線などによる活性酸素の増加(光老化)があります。NAD+が高まると、抗酸化酵素の活性がサポートされ、細胞ダメージを抑えうる可能性があります。
実際、マウス実験では紫外線照射後のダメージ軽減やコラーゲン減少の抑制が報告されていますが、ヒトの皮膚で同じ効果があるかは今後の研究を待つ必要があります。

◇ 化粧品への配合は有効?

一部の化粧品ブランドが「NMN配合クリーム」「NMNエッセンス」などを販売していますが、NMNは水溶性で分子量が大きいため、皮膚のバリアを直接通過して真皮や表皮基底層へ浸透できるのかは懐疑的です。
経口摂取(サプリメント)と比べた場合、皮膚塗布での実証データはまだ乏しいので、効果を期待するには時間がかかるかもしれません。

【メリット】NMNがもつ大きな魅力

以上のように、ヒト臨床試験や動物モデルで示された知見から得られるNMNの肯定的なポイントを整理すると、以下のようになります。

  1. 安全性が比較的高い:100〜1000mg以上の範囲で短期的に摂取しても重大な副作用が報告されていない。
  2. NAD+濃度を上げる手段としては有力候補:食事からは十分に摂りづらいNMNを直接補給できるのが利点。
  3. エイジングケアの可能性:インスリン感受性の改善や運動パフォーマンス向上、テロメア長維持など、多面的なアンチエイジング効果が期待される。
  4. 美容面への波及:抗酸化や細胞修復の観点から、肌老化の抑制に寄与する可能性がある。
  5. 長期的な健康寿命への貢献:マウスでは心血管機能の改善や神経変性の抑制などのデータもあり、ヒトでも健康リスクを減らす可能性がある。

【デメリット】NMN研究でまだ不足しているポイント

逆に、まだ解決されていない問題や懸念点もあります。論文でも以下のような課題が指摘されています。

◇ 長期安全性に関するデータ不足

臨床試験は数週間から数か月規模の研究が多く、「数年単位で摂取した場合に本当に安全か」は未検証です。特に大規模な長期試験がほとんどないため、上限摂取量や副作用の発現リスクなどを明確にするにはさらなる研究が必要です。

◇ 被験者数の少なさ・特定集団偏重

研究対象となった被験者数が数十名程度にとどまる試験が多く、高齢者や肥満気味の方が中心。
一方で、若年者・女性・基礎疾患をもつ方など、幅広い層でのデータを集めないと、一般化した結論を得るのは難しい面があります。

◇ NMN吸収メカニズムの不明点

NMNは細胞膜を直接通過するのではなく、一旦「NR(ニコチンアミドリボシド)」に変換されてから吸収される可能性が大きいと考えられています。
また、腸内細菌や代謝経路によって変化が起こることも示唆されており、ヒトでどの程度NMNが効率よく利用されるのかはまだ明確でありません。

◇ 過剰摂取や相互作用リスク

NMNを非常に大量に摂取した場合のデータは不足しており、体内でどのような副産物が増えるのか薬との相互作用はどうなるのか、なども未知数。安全だからといって安易に極端な量を摂るのは危険でしょう。

◇ FDA(米国食品医薬品局)の規制動向

論文でも言及されているように、2022年11月にFDAが「β-NMNは医薬品としての位置づけで研究中であるため、サプリメントとしては認めない」と表明し話題になりました。
この規制動向が今後のNMNサプリ市場にどのような影響を及ぼすかは不透明です。ただし、市販されているNMN製品は多く存在し、欧米・アジア各国でも引き続き研究が進められています。

【最新知見のまとめと今後の展望】NMNの正しい付き合い方

以上を踏まえ、論文を中心とした現状の知見を再度整理し、NMNとの“正しい付き合い方”について考えてみましょう。

◇ 1)安全性:大きな問題は報告されていないが、長期研究は不足

現時点での臨床試験(短期〜中期)では、重大な副作用はほぼ確認されていません。しかし、長期リスクや大量摂取による影響は未知数
健康な人がサプリとして活用する場合、用量は各製品の推奨摂取量を超えない範囲にとどめるほうが無難でしょう。

◇ 2)アンチエイジング効果:NAD+補正による多面的な恩恵が期待

血中NAD+が上昇すれば、代謝機能の活性化インスリン感受性向上運動パフォーマンスの改善などが期待されます。肌の老化対策やテロメア維持など、大きな可能性が見える分野も多いです。

◇ 3)用量・摂取タイミングの最適化

研究によっては、午前中よりも午後や夜に摂るほうが運動パフォーマンスの指標がよくなる可能性を示唆するものもあります。
加齢や体調、生活リズムによっても差が出るため、個人の状況に合わせたタイミングや用量を検討する価値があります。

◇ 4)生活習慣との併用が効果的

論文中でも「NMN単独より、運動適切な栄養管理などと組み合わせるほうが有益かもしれない」ことが示唆されています。
NMNはあくまでNAD+を補うひとつの手段であり、睡眠バランスのとれた食生活適度な運動など、基本的な生活習慣を整えてこそ十分な効果が期待できます。

◇ 5)今後の研究に期待:多様な集団での大規模・長期試験

NMN研究はまだ始まったばかりとも言えます。今後さらに、大規模なプラセボ対照試験多様な年齢層・人種・性別での検証複数年に及ぶ長期追跡などが実施されるでしょう。
特に、以下のような点が待たれています。

  • NMNを長期的に摂取し続けた際の安全性
  • 高齢者以外(若年層、女性、妊婦など)のデータ
  • 皮膚科学的エビデンス:実際にシワやたるみが改善したのかなど
  • 腸内細菌叢への影響や、ほかの栄養素との相互作用

【さらに知っておきたい豆知識】NMNと他の成分の併用や新たな研究領域

NMN以外にも、NR(ニコチンアミドリボシド)NAM(ニコチンアミド)など、NAD+を増やす前駆体は複数存在します。
実は、NRやNAMもヒト臨床試験で一定の安全性や効果が示されており、どれが最も効率的かはまだ比較検証の途中です。

◇ NMN+レスベラトロール・サーチュインとの関係

ポリフェノールの一種であるレスベラトロールと、NAD+依存性タンパク質であるサーチュイン(SIRT)には相乗効果があるという説があります。
レスベラトロールがSIRT1を活性化させ、NMNがNAD+を補充することで、SIRT1をはじめとするアンチエイジング関連経路をより強力にサポートする可能性があるとされます。

◇ FDAの規制を乗り越えられるか?

米国でのFDAの規制動向は厳しいものの、世界中の研究機関や企業がNMN研究を継続しています。将来的に医薬品用途でのNMN利用が増えるのか、あるいはサプリメントとして一般化するのか、まだ流動的です。

◇ スキンケアへの応用は要データ蓄積

経口摂取が主流のNMNですが、肌に直接塗布する化粧品にも取り入れる動きがあります。しかし、ヒトの皮膚を通してNMNがどれだけ浸透するかは未解明。
今後、皮膚浸透技術の開発エビデンスに基づいた臨床試験がさらに行われれば、化粧品領域でもNMNが注目されるかもしれません。

【まとめ】NMNの魅力を理解し、上手に活用しよう

今回取り上げたレビュー論文では、NMNのヒト臨床試験での安全性やアンチエイジング効果が一定の肯定的根拠を持って示唆されています。
一方で、長期的・大規模な安全性データや、若年層を含めた幅広い対象への影響皮膚科学的観点など、まだまだ解明が進んでいない部分も多いのが現実です。

美容や健康への投資としてNMNを検討している方は、次の点を意識してください。

  1. 信頼できるメーカーや研究実績のある製品を選ぶ(粗悪品や表示偽装には注意)。
  2. 用量は推奨範囲内を守り、極端な過剰摂取は避ける。
  3. 生活習慣の改善(運動・食生活・睡眠)と併用することで効果が出やすい。
  4. 既に疾患をお持ちの場合は主治医に相談する。

今後、NMN研究がさらに進めば、“本当に若返るサプリ”と呼べるだけの裏付けが得られる可能性もあります。
しかし現時点では、「NMNさえ飲めば何もせずとも老化が止まる」わけではないという点は強調しておきたいですね。
あくまで総合的なライフスタイルの一部として、NMNを上手に取り入れていくことが賢明です。


【参考文献】

  • Song, Qin et al. “The Safety and Antiaging Effects of Nicotinamide Mononucleotide in Human Clinical Trials: an Update.” Advances in nutrition (Bethesda, Md.) vol. 14,6 (2023): 1416-1435. doi:10.1016/j.advnut.2023.08.008

※本記事で参照した論文は上記のレビュー論文です。現時点(2023年時点)で公開されている要旨および著者らの議論をもとに作成しています。
この文献はオープンソースではないため、本記事では要旨の記載にとどめ、詳細部分の引用は避けています。

※当ブログに掲載されている情報は、一般的な情報提供を目的としており、個々の診断や治療に代わるものではありません。掲載内容はご自身の判断と責任においてご利用いただき、具体的な医療上の疑問や症状につきましては、必ず専門の医師による診察を受けてください。
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なお、医療技術の進歩や法令等の改正により、情報が変更される可能性がありますので、最新の情報やご自身の健康状態に即した判断は、直接専門医にご相談の上で行っていただくようお願い申し上げます。

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